椅子置き場

女性向けゲームアプリについての考察その他

ぼくたちの推しゲームアプリはあんスタになれない

こんにちは、椅子です。

前回、前々回と続けて推しゲームアプリの応援に関する記事を書いたので、今回はその応援が目指す場所について考えてみたいと思います。

 

みなさんは、どのような思いで推しゲームアプリを応援されてますでしょうか。

もっと流行ってほしい。

ゲームの素晴らしさを皆に知ってほしい。

様々な思いがあるかと思いますが、ゲームアプリの応援は多くの場合『推しゲームアプリが人気になってサービスが長く継続してほしい』というのが本質かと思います。

 

ゲームアプリの人気度を測る指標の一つとして、売上高があります。

有名な『Game-i』さんのページなどで確認されている方も多いのではないでしょうか。

game-i.daa.jp

 

ぼくたちユーザは、なんとなくの経験則から「他のゲームよりも売上が良いゲームはサービスが継続されるだろう」という意識を持っています。

裏を返せば、売上ランキングの順位が低いとサービス終了への不安が増すということになります。

好きな作品の売上が他作品と比べて低いと、「好きだし応援したいけどもうサービス終了が近いのではないか」「応援しても無駄になってしまうかもしれない」などと疑心暗鬼に陥ってしまうこともあるかと思います。

 

この『売上ランキングはサービス継続の指標』という考えは、はたして本当に正しいのでしょうか。

 

ぼくは、売上ランキングとサービス継続率の関連性は今後薄れていくのではないかと考えています。

というのも、そもそも現状の売上ランキングの順位が今後大きく変動することはほとんどないと思っています。

正確には、現在ランキング順位があまり高くない作品や今後新しく登場する作品が、ランキング上位の作品と同等の売上をあげることは難しいという意味です。

では、現在売上ランキング上位の作品以外は全て衰退してしまうのでしょうか。

もちろん、そういうわけでもありません。

ゲームアプリ市場には、もっと本質的な変化が起こるのではないかと考えています。

 

というわけで今回は、例として『あんさんぶるスターズ!!』シリーズが女性向けゲームアプリ市場において売上上位であり続ける理由を分析した上で、今後市場がどのように変化していくのかについて考察したいと思います。

毎度ながら、一ゲームアプリユーザの妄想としてお読み頂けますと幸いです。

 

 

あんさんぶるスターズ!!』シリーズの売上分析

あんさんぶるスターズ!!』(以下あんスタ)シリーズは、女性向けゲームアプリのビッグタイトルです。

作品の詳細につきましては、みなさまご存知かと思いますので割愛させて頂きます。

(詳しくは下記公式サイトをご参照ください)

ensemble-stars.jp

 

第一弾のゲームアプリである『あんさんぶるスターズ!』は2015年4月にリリースされ、現在も『あんさんぶるスターズ!!Basic』として継続運営されています。

また、音ゲーである『あんさんぶるスターズ!!Music』は2020年3月のリリース当初から月次売上10億円前後をキープしています。

このことからあんスタは、『人気があり売上高が大きい女性向けゲームアプリ』に該当していると思われます。

というわけで、まずはあんスタがトップレベルの売上高を維持し続けている理由を分析します。

世界観やキャラクターが評価されているのは言うまでもないので、今回は作品の変遷や展開方法の観点から考えてみたいと思います。

 

1.課金のコスト回収に対する信頼性が高い

ゲームアプリの売上高は、課金額に依存します。

それでは、ユーザが課金したいと思う条件にはどのようなものがあるでしょうか。

もちろん『作品が好きで応援したい』というのが一番かと思いますが、それだけではありません。

加えてユーザは、『自分が課金しても損をしないか』ということを考えます。

平たく言えば、今から課金するゲームアプリのサービスが今後も継続するかを考えるということになります。

 

例をあげてみます。

下記のように、全く同じゲームに対して二通りの状況があったとします。

この場合、①と②ではどちらの方が課金したいと感じるでしょうか。 

①:ゲームAは3000円の課金で10連ガチャをプレイできる。ゲームAの売上はランキング5位であり近々3周年イベントが開催される。
②:ゲームA(①と全く同様)は2000円の課金で10連ガチャをプレイできる。ゲームAの売上はランキング40位であり公式からのアナウンスもあまりない。

 

おそらく大抵の人は、①の方が課金したくなると回答するかと思います。

ここで、それぞれの状況を整理してみます。

課金によって可能になる行為はどちらも「10連ガチャ」であり、①と②に違いはありません。

また、純粋なコストで考えれば①は3000円、②は2000円のため②の方が得になります。

課金に関する情報は、この二つ以外定義されていません。

つまり、合理的に考えれば①と②で得られる結果は同等でありコストは②の方が低いのです。

ではなぜ、ぼくたちは①の方に課金したいと考えるのでしょうか。

 

心理学では、『人間は同額の利益から得られる満足より損失から受ける苦痛の方がはるかに大きい』ということが実証されています。

10000円を失ったときの損失感は、10000円もらった時の満足感に比べて圧倒的に大きく感じるそうです。

これは、『損失回避の原則』と呼ばれています。

上記の例であれば、②は近いうちにゲームがサービス終了してしまう可能性、つまり自分が損をする可能性があると予想されます。

したがって、数値的なコストは高いけどその後の損を回避できそうな①が選ばれたということになります。

 

ご存知の通り、ゲームアプリのサービス終了はユーザにとって最大の損失です。

つまり、サービスの継続可否はユーザの課金判断に大きく影響するのです。

 

それでは、あんスタのサービス継続可否に対する信頼性はどうでしょうか。

あんスタは、女性向けゲームアプリ黎明期(2013-2015年頃とします)から現在まで市場を牽引し続けています。

にわたまな話ではありますが、『継続していること』は最も有効な継続に対する信頼性の証明になります。

つまり、数年間継続しているあんスタは継続に対して高い信頼性があり、安心して課金ができるということになります。

ユーザの課金に対する心理的なハードルが低いことは、そのまま売上の向上に繋がるのではないでしょうか。

 

2.異例の方法で大量の新規ユーザを獲得した

サービスにおいて、新規ユーザを大きく獲得できるのは新しい商品が発売するタイミングです。

例えばコンシューマゲームでは、ナンバリングの最新作が出たときなどが該当します。

しかし、ゲームアプリは買い切りではなく一つの作品を長期間継続して遊ぶタイプのゲームです。

そのため、新規ユーザを大量に獲得できるのは基本的にリリース直後のみであり、それ以降はどんどん難しくなっていきます。

 

あんスタは、2020年3月に従来のゲームに加えて『あんさんぶるスターズ!!Music』をリリースしました(同タイミングで従来のゲームもアップグレードしています)。

これは、ゲームアプリとしては異例の出来事です。

そして、これにより多くの新規ユーザの獲得に成功したと思われます。

あんさんぶるスターズ!!Music』がリリースされた2020年3月前後の2つのゲームの売上をみてみます。

(前述の『Game-i』さんのページを参考にしています)

あんさんぶるスターズ!あんさんぶるスターズ!!Basic)(参考

2018年(月平均):6.4億
2019年(月平均):4.2億
2020年(月平均):1.5憶
あんさんぶるスターズ!!Music(参考

2020年(月平均):9.7億

2020年は2019年の倍以上の売上となっていることから、『あんさんぶるスターズ!!Music』は従来のあんスタユーザだけではなく新規のユーザがプレイ・課金していることが伺えます。

実際、ぼくの周りにも『あんさんぶるスターズ!!Music』から始めたという方が複数いらっしゃいます。

 

つまりあんスタは、リリース後の新規ユーザの大量獲得が難しいゲームアプリ市場において異例の方法で新規ユーザを獲得し、売上の大幅アップを達成したのです。

 

絶対的な価値観

まとめると、あんスタの売上が大きい理由は下記の通りとなります。

・ゲームが長期間継続している
・新規ゲームをリリースした

それでは、これが売上ランキングでトップになるための条件なのでしょうか。

そう考えると、少し違和感があります。

これら2つを達成するためには、そもそも資金が必要です。

つまりあんスタは、既に自身で大きな売上を持っているから売上を大きくできているのです。

言い換えれば、あんスタの売上はあんスタだからこそ実現できているだけであり、他作品とはそもそもの前提が異なります。

これはあんスタに限った話ではありません。

それぞれの作品が十人十色の売り方をしており、そこから売上高のみをピックアップして比較しているのが売上ランキングなのです。

言葉遊びのようですが、これはかなり重要なことだと思っています。

そしてこれが、ぼくが今後市場の売上ランキングはあまり変動せずサービス継続率との関連性も薄れていくと考えている理由です。

 

順番に説明します。

ゲームアプリに限らず、競争が激化し過ぎると界隈が疲弊し価値の基準が相対的なものから絶対的なものに移ると言われています。

これは、競い合って勝つことが目標だった状態から、本質的な価値観を求める状態に変化するという意味です。

つまり、他者との比較ではなく自分にとって本質的な価値観を模索するようになるのです。

 

ぼくは、ゲームアプリ市場はもうすぐこの段階に入る(もしくは既に入りかけている)と思っています。

ゲームアプリが乱立していた2018年~2019年を経て、現在市場は一旦落ち着いたといえるでしょう。

おそらく今後のゲームアプリ市場では、他作品と比較して相対的に評価されることではなく自作品が本当にやりたいことを実現することが重要視され始めるのではないでしょうか。

もちろん、売上が全くないとサービスは継続できないので前提としてある程度のトレードオフは存在します。

しかし、一時期のように過剰に宣伝を打ったりリリース前から大量にグッズを展開したり等、ある種博打のような挑戦をすることはなくなっていくと思われます。

実際現在のゲームアプリ市場では、そのような無謀な挑戦をする作品は少なくなったように見受けられます(たまにありますが)。

 

売上に関して言えば、今回例として挙げたあんスタは今後もランキングトップ層であり続けるでしょう。

それ自体は本当に素晴らしいことです。

しかし、売上ランキングはあくまで相対的な価値観です。

絶対的な価値観が重要視される世界では、他者との比較に意味はありません。

つまりぼくたちユーザも、推しゲームアプリの売上が他の作品と比べて低いなどと悩む必要はなくなるのではないかと考える次第です。

 

ナンバーワンにならなくてもいい

というわけで今回の考察におけるぼくの結論は、

・今後のゲームアプリ市場は相対的な価値より絶対的な価値が重要視されるようになっていく可能性が高い
・それにより他作品と比較することの意味が薄れてくる

です。

 

繰り返しになりますが、一番言いたかったことは今後は自分が応援したい作品と他作品を比較して劣等感を感じたり不安になったりする必要はなくなるということです。

これは自分たちのためでもありますが、公式のためにもなると思っています。

ぼくたちユーザには作品を変える力(権利)はありませんが、ユーザの行動は確実に作品の進む道に影響を与えます。

極端な話ですが、まだサービス終了を想定していなかった作品でも、ユーザがサービス終了するかもしれないと思ってプレイや課金を止めたりすればそれが原因でサービス終了してしまう可能性もあります。

もちろん、本当にサービス終了しそうだったりあまりにも無謀なことをしている作品に見切りをつけることも、楽しくゲームをプレイするためには必要なことです。

判断を誤らないためにも、作品の本質を見極めて公式の価値観を理解した上で応援することがユーザと公式双方の幸せに繋がると考える次第です。

 

 

とかなんとか偉そうに言いつつ、これを書くときに見た売上ランキングでぼくの推しゲームアプリである『夢100』が2021年3月に引き続き4月も一桁順位を狙えそうだったのでちょっとワクワクしてました。

構え過ぎず何事もほどよく楽しむことが、平穏な心を保つ一番の方法なのかもしれません(まとまらない)。

 

 

今回の記事に関連する内容として、『推しゲームアプリの盛り上がりを推測する方法』と『新規ユーザが増えない理由』についての動画を作成しました。

よろしければ併せてご覧頂けますと幸いです。

youtu.be

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